ASDの言語発達における親の言語入力と社会経済的地位の影響
このブログ記事は、発達障害や自閉症、ADHDなどの神経発達障害(NDDs)を持つ人々やその家族を対象とした支援や介入に関する最新の研究を紹介しています。記事では、ADHDを持つ未就学児の生活の質や家庭内外での参加パターン、家族のルーチンの影響を探る研究、自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症におけるWntシグナル伝達経路の役割のシステマティックレビュー、ADHD評価での誤検出率を高める要因の調査、ADHDの症状の性差に関するメタ分析、視線の移動と注意メカニズムの関連を探る研究、日本におけるNDDs支援グループの活動状況調査、そして自閉症児の言語発達における親の言語入力と社会経済的地位(SES)の影響など、多岐にわたる研究が取り上げられています。
学術研究関連アップデート
Home and Community Participation Patterns, Quality of Life and Family Routines among Preschool Children with ADHD
この研究は、ADHDを持つ未就学児の家庭や地域での参加パターン、生活の質(QoL)、家族のルーチンの関係を調査しています。4~6歳のADHDと診断された、または疑われる70人の子どもの親が、参加頻度や環境要因、QoL、家族のルーチンに関するアンケートに回答しました。結果、家庭内での参加頻度や変化への欲求は地域でのそれよりも高く、一方で参加の深さには違いが見られませんでした。また、環境要因が参加を促進・妨害する要素として確認され、家庭内での参加と家族のルーチン、QoLとの間に有意な相関があることがわかりました。これらの結果から、ADHDを持つ子どものQoL向上と参加促進に向けた適切な介入目標を設定するため には、参加パターンや環境要因、家族のルーチンについての詳細な検討が必要であることが示唆されました。
Unraveling the Role of Wnt Signaling Pathway in the Pathogenesis of Autism Spectrum Disorder (ASD): A Systematic Review
この研究は、自閉スペクトラム障害(ASD)の発症メカニズムにおけるWntシグナル伝達経路の役割を調査したシステマティックレビューです。ASDは社会的コミュニケーションの困難、限られた興味、反復行動が特徴で、Wnt経路の異常が関与している可能性が示唆されています。この経路は細胞の運命決定や神経形成に関与し、ASDに関連する分子、細胞、そして生理学的レベルでの異常に影響を与えるとされています。研究では、Wnt経路を標的とした薬物(例:カナグリフロジン)が動物モデルで自閉症様行動を軽減することが確認されており、将来的にASDの治療ターゲットになる可能性が示唆されています。このレビューは、Wnt経路の変化がエネルギー代謝や酸化ストレス、神経新生、シナプス伝達、ミトコンドリア機能などを通じてASDの症状に影響を与える可能性を強調しています。
Identifying Factors that Increase False-Positive Rates on Embedded Performance Validity Testing in ADHD Evaluations
この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の評価において、埋め込まれたパフォーマンス妥当性指標(EVI)の誤検出率(FPR)がなぜ高くなるのかを調査したものです。ADHDの成人患者517名を対象に、複数の妥当性テストで有効なテストパフォーマンスが確認されたうえで、15のEVIとFPRの関係を分析しました。結果、6つの認知テストのうち2つから導かれたEVIは個別使用でFPRが10%以上となり、持続注意力テストのEVIではFPRが約11%に達しました。また、人種などの人口統計的調整を行わないEVIはFPRが14%近くに上昇することが確認されました。一方、FPRにはタイム制限の有無や言語・非言語的要素の影響は少ないことが示されました。この結果から、テストの種類やEVIの総数を考慮して、誤検出率を低減させる必要があると結論付けられました。
A systematic review and meta-analysis comparing the severity of core symptoms of attention-deficit hyperactivity disorder in females and males
この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)のコア症状の重症度における性差を調査した系統的レビューとメタ分析です。DSM-IV、DSM-IV(TR)、およびDSM-5基準に基づき、ADHDを持つ子どもと成人における評価スケールと臨床面接データを比較しました。1996年から2021年までの関連研究を対象に、51件の研究(評価スケールと臨床面接データを併用)、18件の評価スケールデータのみ、33件の臨床面接データのみを分析しました。計52件の研究からのデータを基に15件のメタ分析を実施しました。
結果として、ライフスパン全体で評価スケールと臨床面接データを併用した解析では、男性が女性よりも有意に多動性/衝動性の症状が重いことが示されました。評価スケールデータのみでも同様に、男児が女児よりも多動性/衝動性の症状が重い傾向が見られました。成人期においては、男性が女性よりも不注意の症状が重いことが評価されましたが、多動性/衝動性の症状に性差は見られませんでした。すべての差異は小さな効果量でした。また、臨床面接データでは、子どもおよび成人のどちらでも症状の性差は確認されませんでした。評価スケールと臨床面接データの結果の相違についても考察が行われています。