ADHDに対するデジタル治療法の有効性の検証
この記事は、発達障害や福祉に関する最新の学術研究を紹介しています。具体的には、ADHDに対するデジタル治療法の有効性を検証した研究、自閉スペクトラム症(ASD)とアトピー性湿疹(AE)の関連性を探るメタ分析、そしてバイリンガル環境で育つ自閉症の子どもたちに対する親主導のコミュニケーション療法(PLT)に関する文献レビューを取り上げています。
学術研究関連アップデート
Real-time cognitive performance metrics derived from a digital therapeutic for inattention predict ADHD-related clinical outcomes: Replication across three independent trials of AKL-T01
この論文は、注意欠陥多動性障害(ADHD)に対するデジタル治療法(DTx)であるAKL-T01のゲームプレイデータから、リアルタイムで注意力を測定する指標を導き出し、その指標が臨床的な結果とどのように関連しているかを検証しています。AKL-T01は、マルチタスクゲーム中に動的に難易度を調整することで注意力を鍛える治療法です。3つの独立した臨床試験(成人、青年、児童)で、この指標が注意力の臨床評価(TOVA-ACS)と有意に関連していることが確認されました。また、成人では生活の質の自己報告、青年では臨床医によるADHD症状評価とも関連が見られました。この研究は、AKL-T01のゲームデータから得られるリアルタイムの注意力指標が、ADHD治療における有効なモニタリング手段となることを示唆しています。
Examining the association between autism spectrum disorder and atopic eczema: meta-analysis of current evidence
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)とアトピー性湿疹(AE)との関連性を調査するためのメタ分析を行っています。著者たちは、2023年8月までに発表された関連研究を包括的にレビューし、合計30の研究を分析しました。
主な結果として、ASD患者における湿疹のリスクが、ASDでない患者と比較して有意に高いこと(リスク比1.34)が示されました。また、湿疹患者におけるASDのリスクも高い可能性が示唆されました(リスク比1.67)。
この研究は、ASDとAEの間に関連がある可能性を強調しており、これらの疾患の潜在的な関連性とそのメカニズムに対する新たな視点を提供しています。
Parent-led Communication Therapy for Young Bilingual Autistic Children: A Scoping Review
この論文は、バイリンガル環境で育つ6歳以下の自閉症の子どもたちを対象とした、親主導のコミュニケーション療法(PLT)に関する文献をレビューしています。JBIガイドラインに従って、16の研究がレビューの対象に選ばれました。2015年以降に発表されたPLTに関する報告が急増しており、選ばれた論文の93.8%がこの期間に発表されたものです。しかし、参加者の家庭内言語(L1)と社会的な言語(L2)の報告は一貫しておらず、研究方法や報告される結果にもバラつきが見られました。
特に、研究の大多数(87.5%)が北米で行われているか、北米の機関と協力して行われていることが分かりました。このレビューは、バイリンガル環境で育つ自閉症の子どもたちに対する親主導のサポートの重要性を強調し、さらなる研究と標準化された報告基準の改善が必要であることを指摘しています。